統合失調症のケアマネジャー

人生の大半をメンタルヘルスに費やしてきた男性の経験談

映画「ツレがウツになりまして」を鑑賞して。

こんにちは。pepeneeです。今日は、宮崎あおい堺雅人主演の映画、「ツレがウツになりまして」という映画を観たので感想を書いていきたいと思います。

 

堺雅人演じる「ミキオ」が秀逸。

この映画で主役のウツになる男性、「ミキオ」こと「ツレ」は、毎週会社に出社するためのネクタイ、お弁当に入れるチーズも日替わりで決めており、自分の中のこだわりが強いタイプの人物です。その「ツレ」が、ある日食欲がなくなり、ついには会社に行けなくなります。会社はパソコンのコールセンターの仕事。責任感の強い「ツレ」は、日々たくさんの電話対応に追われる毎日。クレームの嵐の中、誠実にクレームを処理していきます。しかし、毎日の疲れがどんどん蓄積し、とうとう精神科にかかり、うつ病だと診断されます。

 

宮崎あおい演じる「ハルさん」が、”頑張らない”宣言。

見かねた売れない漫画家の伴侶、「ハルさん」が「ツレ」に会社を辞めてくれと切り出します。躊躇する「ツレ」は、責任感から”僕がいなくなると、会社が大変な事になるんだよ”とつぶやくばかり。しかし、「ツレ」の心身状態が心配な「ハルさん」は”会社辞めないと離婚する”とキッパリ。伴侶の「ミキオ」さんを心から心配している気持ちが一番伝わるシーンです。物語は、「ツレ」のうつ病の経過を丁寧に描くように進んでいきます。仕事を辞めて、ほっとした「ツレ」は始めの方こそ気分がいい日がありますが、そんな日は長くは続かず、一転、布団の中で亀の様に寝続ける状態を送ります。気分が上がったり下がったりを繰り返し、以前は簡単にできていた日常生活の様々な事が、出来なくなっていく自分を「ツレ」は情けなく思うばかり。そんな中、「ハルさん」が毎日の絵日記で、「頑張らないゾ!」といつ抜けるかもしれないトンネル生活を、”頑張らない宣言”で乗り切ります。この、精神疾患に”頑張らない”という宣言はとても大事な視点だな、と思いました。そして、その精神疾患を支える家族も、同じく頑張ってはいけません。「ハルさん」の適度な適当さが、この一番大切な”頑張らない”という視点を持たせたのでしょう。

 

③少しづつ回復していく「ツレ」

「ハルさん」の愛情に支えられ、「ツレ」は少しづつ、少しづつ回復をしていきます。精神疾患には、この気の遠くなるような愛情あふれる見守りが大切なのです。そして、「ツレ」は精神病薬を飲まなくてもいいくらいにまで回復します。そんな矢先、小さなことがきっかけで、「ツレ」と「ハルさん」は喧嘩し、「ツレ」はお風呂場で首つり自殺を図ります。「ハルさん」がすぐ気づいて、自殺は防げましたが、「ツレ」の気持ちには、”自分なんか生きていてもしょうがない”という感情が沸き上がったようです。精神疾患に孤独感は禁物で、治りかけが一番自殺率が高い事を物語を通して描いています。

 

④紆余曲折を得て、「ツレ」と「ハルさん」は本当の夫婦に。

物語の終盤、結婚した時期が同じカップル同士の同窓会に「ツレ」が出席したい、と言い出します。そこで、「ツレ」は堂々とみんなの前でうつ病になった経緯をみんなに話し始めます。後半、「ハルさん」は、”病める時も、健やかなるときも汝、この者を愛する事を誓うー。”という結婚式の言葉を引き合いに出し、自分たちが病気とともに絆を深めてきたことに言及し、そして、”私たち夫婦は、やっと本当の夫婦になった気がします”と締めくくります。

 

⑤pepenee的解釈。

「ハルさん」には、この「ツレ」のウツになった経緯を漫画にする事で、「ツレ」を支えました。自分の描きたいことを、この身近な病気に焦点を当て、漫画にしたのです。この漫画はたちまち多くの共感を呼び、そして、このような映画化にまで発展したのです。精神疾患がこんなに増えてしまうこの社会は、確かに改善しなくてはいけない。しかし、まずは「ツレ」と生活を繋いでいく為にはお金が必要である。そして、「ハルさん」は自分たちの闘病生活を赤裸々に漫画にして生活を繋いだ。その勇気と愛と大胆さに拍手を送りたいと思います。そして、漫画や映画を通して、精神疾患には”頑張らない”大切さを広く社会に訴えた力作だと思います。今、うつ病で(または、他の精神疾患で)苦しんでいる当事者、その支え手である家族が観てほしい映画になっていると思います。僕自身は統合失調症ですが、赤裸々にそのことをこのブログで発信し、同じような境遇にいる人々の希望になったり、勇気を与えることが出来たならいいな、と感じました。

 

このブログは、精神疾患等に罹った方が幸せに生きるヒントを書いています。これからもどうぞよろしくお願いします。