統合失調症のケアマネジャー

人生の大半をメンタルヘルスに費やしてきた男性の経験談

明石順平 著 「人間使い捨て国家」を読んで。

こんにちは。pepeneeです。今日は、昨年末に出版された、弁護士の明石順平氏が書いた現代人必読の書、「人間使い捨て国家」角川新書 を読んだので、その感想を書いていきたいと思います。

 

①この国にブラック企業がのさばる。

過労死ラインというものがあります。月80時間を超える時間外労働を強いられる場合は、この過労死に該当してしまうとして、厳に慎まなくてはならないはずです。毎年、痛ましい過労死や、精神疾患、自殺が事件として上がってしまう日本。しかし、その過労死ラインを越えて働いてはいけないにもかかわらず、国が定めた法律では、その長時間労働を行っても違法にならないような法律の抜け道をもうけています。詳しくは本書で確認してもらいたいのですが、裁量労働制など、基本的にどれだけ働いても大丈夫なような法制度が存在します。そして、ほとんどの会社では、サービス残業が当たり前になっているのが実態ではないでしょうか。僕の以前働いていた会社では、社長たちが定時近くに帰り、そして仕事の終わらない他の職員がタイムカードを退勤時間記録して、そのあと、会社に残って夜遅くまで残業するという謎のルールがありました。つまり、タイムカード上では定時に来て、定時に上がっている訳です。その残業代不払いを会社が認めるような行為を上からの圧力で、また、自分たち従業員が空気を忖度して、残業している証拠のタイムカードを自ら不正していました。しかし、これは僕がいた会社だけではないはずです。この著書でも、日本中で残業代不払いが横行している事実が浮き彫りにされます。残業代不払いは犯罪のはずです。しかし、罰則が軽く、企業や会社からすると、痛くもかゆくもありません。しかし、もし、正確に出退勤時間を管理して、記録して裁判の証拠として残しておけば、膨大な残業代が請求できます。だから、ブラック企業は出退勤の記録を残さないのです。

 

②コンビニの罠。

コンビニの会計をご存じでしょうか。例えば、定価100円、原価70円のおにぎりを10個仕入れ、8個売れたとします。そこにフランチャイジーの本部が60%持っていくロイヤリティーをかけているとします。

 

●売上800円(100円×8個)-原価700円(70円×10個)=粗利100円

これに60%をかけたロイヤリティーが60円となります。

一方、コンビニ(セブンイレブン)会計では、原価に売れた商品しか含まない為、下記の計算になります。

●売上800円(100円×8個)-原価560円(70円×8個)=粗利240円

これに60%をかけたロイヤリティーが144円になります。

 

つまり、廃棄商品、万引き商品分ロイヤリティーが増える計算になるという恐ろしい会計になる訳です。商品が売れても売れなくても、ロイヤリティーはしっかり発生するという異常な会計がまかり通っている訳です。これを搾取と言わなくて、何が搾取でしょう。

 

外国人労働者の搾取実態。

次に外国人労働者の搾取実態についてみていきます。これには、外国人が就労する就労先企業、まず日本に来て、日本語を学ぶ目的の日本語学校、そして、ベトナム等で日本に出稼ぎに来る外国人を日本人学校に連れていくブローカーが存在します。ベトナム人等は、ブローカーから”月、20~30万稼げる”と甘い言葉をかけ、留学を勧めます。しかし、留学には初年度の日本語学校の学費、ブローカーへの仲介手数料、渡航費など、多大のお金が必要になります。150~200万円要求されることもあります。そして、当然そのような大金は用意できないので、家族は家や土地を担保に入れて借金してお金を工面します。しかし、1週間に28時間の就労しか許されない入管法の説明がなされておらず、外国人留学生たちは学費と借金返済の為に摘発されるリスクを背負って就労します。そして、就労先も見て見ぬふりをします。給料からは借金や寮費が天引きされ、手元にはわずかしか残らないのです。そこで帰ろうと思っても、莫大な借金があり、帰国するとその返済が出来なくなる為、帰れないという状態に陥ってしまうのです。ブローカーは留学生からも日本語学校からも手数料を取得でき、借金の利息も手にできます。就労先は人手不足を解消できます。日本語学校は留学生の学費で儲かる上、就労先からリベートを得る事もあります。就労先、日本語学校、ブローカーが潤う一方、外国人留学生たちは搾取されてしまう構造です。

 

④公務員の長時間労働

公立学校教員の異常な長時間労働にもこの著書は触れています。この公立学校教員は、過労死ラインを越えて長時間労働している現実があります。それは、給特法という法律により、「教員職員については、時間外勤務手当及び休日時間外手当は、支給しない」と条文に書かれている為なのです。それだけでなく、公立だけでなく、私立学校のほとんどが残業代を払っていないと思われる、と著者は書いています。国家公務員も地方公務員もみな長時間労働を強いられている現状についても書かれています。働き方改革を行う厚生労働省の職員が長時間労働して進めている事も、非常に異常な事態だと思います。

 

⑤政治と財界。

さて、なぜこのような長時間労働、残業代未払いが横行しているのか。それは、経団連と政治家の癒着構造がまだしっかり存在している事が大きな原因です。日本の製造業のトップが経団連のトップになる。そして、その周囲も日本の製造業の中心メンバーが占めるようになる。そうなると、自民党の支持母体は経団連なので、経団連関係からの政治献金が必要なら、政治家は経団連の意向を飲まざるを得ない。金と票、どちらも失う訳に行かないのが政治家(自民党)だからです。現に、法人税はピークは、税率43.3%だったものが、現在は23.2%にまで下がっています。そして、悪名高い人材派遣は、とうとう製造業まで手を広げてしまいました。以前は、人材派遣業は基本違法だったのですが、とうとうほとんどの業界で解禁されてしまいました。要するに、日本のトップである経団連は、”人を安くこき使いたい。いらなくなったらすぐ切りたい。税金は払いたくない。”という訳です。まさに、「人間使い捨て国家」です。

 

⑥最後に。

GPIFを中心に、僕らの年金の積立金が株式市場に回っているのはご存じの方も多いと思います。さらに、毎日、株価が下がった場合、日銀が株を買い付けて株価を上げています。このような株式市場への政府、日銀の介入は人類史上類のない出来事です。その副作用がどのように現れるのか、想像できません。著者の 明石順平氏は、最後の章にどのように日本を変えていけばいいのかの提言をされています。しかし、ここまで腐敗した政治と汚職が日本を蝕んでいる実態を受け容れるのが難しいくらいの内容です。政府はいかに国民を騙すかに注力している訳です。

 

このブログは、精神疾患等に罹った方が幸せになるヒントを書いています。これからもどうぞよろしくお願いします。