統合失調症のケアマネジャー

人生の大半をメンタルヘルスに費やしてきた男性の経験談

海外の文学紹介。バーバラ・オコーナー。

こんにちは。pepeneeです。今日は、図書館で偶然見つけた海外の文学作品、バーバラ・オコーナー 著 「ほんとうの願いがかなうとき」「パラダイスに向かって」という二つの作品を紹介したいと思います。

 

①「ほんとうの願いがかなうとき」

皆さんのお近くの図書館にも日本語訳があると思います。主人公の女の子チャーリーは複雑な家庭環境で育ち、とうとう父親は社会復帰促進センターと呼ばれる施設で暮らし、母親はうつ病傾向を示します。地域のソーシャルワーカーは二人の子供姉のジャッキーと主人公チャーリーはそれぞれバラバラに別の場所で住むことになります。チャーリーはそこから母親の姉妹にあたる叔母のバーサ、ガス夫妻に家庭が落ち着くまでの間、引き取られることになるのでした。

 

②新しい環境。

すべてが新しい環境の中、チャーリーはすこしづつバーサやガスに心を開いていって、学校でも新しい友達ハワードが出来、田舎の暮らしに溶け込んでいく事になります。主人公のチャーリーの性格は瞬間湯沸かし器。頭に来ることがあったら我慢が出来ません。学校でも教会学校でも時々問題を起こしてしまいますが、バーサやガス、ハワードはその度、チャーリーを責めずに温かく受け入れます。次第にこの田舎暮らしの生活がなじみ、チャーリーが大切にしている犬のウィッシュボーンを飼うようになって、本当の母親が子供を引き取りたいと言い出します。チャーリーは戸惑います。うつ傾向の母と、暮らすの?だんだん不安になってくるチャーリー。最後の展開まで一気に読み進められるバーバラ・オコーナーの文章力も素晴らしく、アメリカのティーンエイジャーがどんなことに共感するのかを知っている著者は、重い家庭環境の問題を、チャーリーの勝気な性格と周囲の温かな人間関係でさわやかな青春物語に仕上げています。

 

③「パラダイスに向かって」

次の作品は、「ほんとうの願いがかなうとき」より9年前に発表されたバーバラ・オコーナー初の小説作品。トレーラーハウス(キャンピングカーのアメリカ版)が集まって暮らすトレーラーパーク”パラダイス”。主人公のマーティンはそこで暮らす12歳の少年。父親は自分の息子を野球を上手にさせる事に執着している、荒くれもの。マーティンに物は投げるわ、暴言は吐くわ、酷い存在。そんな中でマーティンは野球はてんで不得意。だから父親からはきつく当たられる毎日。そんな威圧的な父親のもとで生活するマーティンには実はすごい才能がありました。それは”音楽”。父親の母ヘイズリンのバッグにたまたま入っていたハーモニカを手に入れたマーティンは、すぐに吹き方をマスターし、周囲の人々をハーモニカの音楽でハッピーにさせます。音楽さえあれば、どんな辛い日常でも幸せに生きることが出来る、そうマーティンは思っていました。ある時、ひょんなきっかけでJ・Hローレンス質店で素晴らしい宝物に出会います。それは美しいバイオリン。それからの毎日はそのバイオリンを演奏している自分を想像する毎日。しかし、値段は50ドル。少年が買えるものではありませんでした。

 

④世間の偏見と少年の純粋な想い。

マーティンには、少し年の離れた女性の友達がいました。ワイリーンという女性です。もう50歳を超えている人物です。マーティンはバイオリンの事をもちろんワイリーンに話していました。ワイリーンはサプライズで、マーティンの為にそのバイオリンを買ってくれていました。それを知ったマーティンは大喜び!ワイリーンの為にバイオリンを演奏できるように練習しました。そして、ワイリーンのトレーラーで毎日のように二人だけのバイオリンの演奏会が続きました。ある日、ワイリーンのトレーラーに、バイオリン演奏会中、あの荒くれ父親が入ってきました。父親は親ほどの年齢の離れたワイリーンと息子のマーティンが仲良くする事を快く思っていませんでした。父親は怒鳴り散らし、マーティンの大切なバイオリンを取り上げてしまいました。さて、ラストはどんな展開を見せるのか。ぜひ、「パラダイスに向かって」を借りて、最後まで読んでくださいね。

 

⑤家庭環境の問題は、アメリカも日本も似通っている。

この二つの作品を読んで思ったのは、家庭環境の問題はどの国の若者も共通して抱えている問題なのだなと思いました。チャーリーは、母親のうつ。父親の反社会性。マーティンは暴力的な父親からの精神的な圧力、価値観の押し付け。そんな父親に何も言わず、従うだけの母親。こうした環境で、若者たちはどう生きていき、自立し、幸せをつかむのか。バーバラ・オコーナーの作品はこうした若者たちの行き場のない現実の閉塞感を、マーティンなら音楽の才能に、チャーリーなら身近な人々のあふれる愛情に救いを感じ、そして葛藤を乗り越え、大人になっていきます。その大人への誰しもが抱える葛藤を上手に物語にしているバーバラ。皆さんも、読んだ後、さわやかな読後感を得られることを約束します。

 

⑥みんな、何かを抱えて生きている。

それぞれの人が、普段は他人に言えない事のひとつやふたつ、あるのが普通ですね。この作品を読んで、誰でも自分が解決しなければならない家庭環境や複雑な人間関係があり、それを乗り越え、大人になる。それは、正解は一つではないけれど自分の力で、そして、周囲の力を借りて乗り越えていく事が、生きるという事なのかもしれません。この二冊の本を読んで、生きる事が素敵だな、と思ってくれる方が一人でも多くいらっしゃることを願っています。

 

このブログでは、精神疾患等に罹った方が幸せに生きるヒントを書いています。これからもどうぞよろしくお願いします。