統合失調症のケアマネジャー

人生の大半をメンタルヘルスに費やしてきた男性の経験談

落合 陽一 著 「日本進化論」を読んで。

こんにちは。pepeneeです。今日は、現在の日本の問題点と、テクノロジーの可能性でその問題点をどう乗り越えていくかが考察されている落合陽一 著 「日本進化論」について書いていきたいと思います。

 

少子高齢化の日本で未来の可能性を探ろうとする良書。

とかく、日本では、財政のひっ迫、社会保障費の増大、少子化問題、超高齢社会など課題が沢山ありすぎてどうしても悲観的な日本の未来像しか描けずにいるのが多くの著作物の特徴ではないでしょうか。しかし、この「日本進化論」では、テクノロジーというキーワードで日本の未来を希望あるものに出来るはず、という落合陽一さんの信念にも似た思いが詰まっています。この本を一冊読めば、現在の日本の問題点と、その解決の糸口がテクノロジーの理解と利用によって解決できるかもしれない事がしっかり網羅されています。

 

②多大な国家予算を、ほぼ65歳以上に割かれ、未来の若者に投資できていない。

日本はGDP世界第三位の経済大国です。では、その大きな国家予算の大部分がどこに使われているかというと、一般会計予算約100兆円のうち、3分の1が社会保障費の補填に使われ、4分の1が国債の返還(国の借金の返済)に消えていき、そこから地方交付税がひかれるので残る予算は26兆円になり、さらに国防費を引くと約21兆円という事になります。このわずかな国家予算で、十分な若者世代、現役世代の投資に回せていないという現状をまず認識する必要があるようです。

 

③新しい子育ての概念。

そんな状況の中、待機児童問題などの課題がある若い世代への子育て問題。この本では旧来あった社会のコミュニティーが崩壊して機能不全に陥っている中、子育ては親の責任だ、という冷たい価値観だけが独り歩きし、子育て世代を圧迫していることに目を向けています。昔の日本は、地域の大人全員で子供を育てよう、という意識が強かった。しかし、現代では近隣とのかかわりが希薄化し、自分の生活だけで精いっぱいで、他者の子供を預かって面倒をみようとする人が減ってしまった。リアルなオフラインでこのような現状があるとするなら、オンラインで新たなコミュニティーを形成していけばいい、と解決策を提示しています。インターネット上では何者かわからない、安全性が担保されない、という意見もありますが、オンライン上でもフェイスブックなど、個人情報がしっかり管理される媒体が出てきていることでオンライン上で信頼が可視化できる時代になってきました。このようにオンラインだから匿名で変な書き込みをしたら、それはそのままその人の信頼を暴落させ、炎上といった結果を招く。オンライン上だからこそ信頼できる新しい人間関係、新しい子育てコミュニティーが形成できるのではないかー。そして、現にベビーシッターのマッチングサービス、「キッズライン」のようにお金を払って子育てを手軽にサポートしてもらうサービスも誕生してきています。失われたコミュニティーという人と人の絆をオンラインというテクノロジーで乗り越えていく。そんな未来が来ているのかもしれません。

 

④教育の時代に合わせたアップデート。

また、次の世代を担う子供たちの教育についてもこの本は述べています。今までの画一的な”先生”から言われた通りのことしかしないいわゆる”いい子”だけが評価される今までの工場勤務を前提とした古い教育は一定の知識を全員に身につけさせるのには向いているのですが、これだと自分の考えや現在の社会の仕組みを理解したり、生きていくために本当の価値ある知識を学ぶには無理があるといえそうです。ひと昔前であれば、上のいう事を黙って忍耐強く聞いていればよかったのですが、その結果、指示待ち人間を大量に作り出してしまいました。これからは、”自分で何を学べばよいのか”をゼロから考え、自分の将来や時代の移り変わりを捉え、自らが主体的に学んでいく多様性のある教育が必要になってきています。例えば、コンピュータープログラミングであったり、(これは今年から導入されます。)また、お金の流れを学習する社会保険社会保障のシステムを学んだり、簿記を学ぶことで、社会や会社がどのようにお金を回しているかを知ったりする。これらのことは一切現在の教育の中では行われず学生は社会に出ていってしまいます。これらの知識は社会人必須の知識にもかかわらずです。本書では、新しく世界的に広がりを見せているMOOCというオンライン学習サービスを挙げています。様々な一流大学の講師の授業をオンラインで自分のペースで主体的に選び、学習していけるコンテンツです。これからの教育は、このようなオンラインサービスや、その分野での第一人者が開くオンラインサロンも、講義形式だけではなくマンツーマン形式で学習できる形が取り入れられています。こうしたテクノロジーを活用した学習形態が、詰込み型の教育に多様性を持たせることになると思います。

 

⑤日本の今後の財源は足りないのか?

最後に、僕も気になったトピックを紹介してみたいと思います。確かに社会保障費増大の中で、2000年から2010年までの社会保障費の急上昇はありました。その上昇幅は6.8ポイント上昇で1.46倍になります。(対GDP比)しかし、2010年以降は2018年までほぼ横ばいが続いています。2025年以降は再び増加傾向にありますが、1.11倍程度と、その上昇は緩やかになるようです。つまり、現状の国家予算や国の財政は、苦しい事に変わりはありませんが、将来的にすごく悲観的になる必要はないと言うことが出来そうです。

 

⑥pepenee的解釈。

このように、現在の日本の問題点を浮き彫りにしながら、テクノロジーの目覚しい発展によって日本の未来を明るい希望のあるものにしようというコンセプトの本書は出版一年を経っても色あせない示唆の富む本になっています。僕は、この本を読んで、世代間の悪者探しで終始する事はあまり意味のない事かもしれないと思いました。現在75歳前後のベビーブームの団塊世代。彼らが必死に働いたからこそ現在の日本の高度経済成長が実現されました。しかし、彼らが思っていたより年金の受取額が多いという訳ではありません。むしろ、減額されているのが現状です。しかし、シルバー民主主義という言葉が示す通り、政治家は高齢者の政策を最優先させなければ、当選できないという現実があり、社会保障費や医療費を拡大させていくのは必然です。また、現在50代のバブル経済入社組はリストラに日々怯えている状況です。あまり言いたくはありませんが、この世代が高給取りであり、生産性が低く、ITリテラシーが低いため社会がITテクノロジーの効率化、省人化を推し進める事を阻む一因であることは否めません。また、彼ら50代の給料、社会保障費、を支払うために現在40代30代の非正規雇用にあえぐ末端労働を強いられている僕たちが少ない賃金、きつい現場労働を引き受けているのが現状です。(女性のパート労働の方も含みます。)このように、今この日本という国は、労働環境が非常に歪んでおり、それを時間が是正するかどうかがカギになると思います。就職氷河期の30代40代に投資すると国もやっと重い腰を上げ始めました。悪者探しで終わるのではなく、建設的で、前向きな次世代の為の良好なみんなにとって住みやすい不公平の無い社会の実現に、政治とテクノロジーの活用は不可欠なのではないでしょうか。

 

このブログでは、精神疾患等に罹った方が幸せに生きるヒントを書いています。これからもどうぞよろしくお願いします。